流月亭 プロトタイプはこんな感じ
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BASARA風味な日記&模造創作忍びが中心のサイトです。苦手な御方様はご注意ください。

プロトタイプはこんな感じ
リハビリも兼ねてなSSSの投下です。
今回はちょっと長くなってしまったので、殆ど下書き状態です;
大体狐白さんの下書きはこんな感じ。
雑な上に恐らく日本語やら文法やらがあちこち変になってます。キャラももしかしたらちょっと違うかもしれません。
普段はこっから色々加筆修正していたりするのですが、本日はちょいと時間が無かったのでこのままで失礼致します。
やっぱりな十勇士(-8)のお話です。

たまには別の組み合わせの保護者ーズを書きたかったのが発端でした。
才蔵編しかギャグになりませんでした。何故だ・・・。
一連の御題はもうズバリ「よい夢を」です。
おやすみなさいです。
快眠したい狐白さんの願望から生み出されました。

寝たいです。切実に。

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※SSS(多分)


遠い昔の夢を見て、弾いたように目が覚めた。


煌々と、月の燈が差し込む部屋の影の床。
むくりと身を起こし乍、海野六郎は目を開ける。
非道く昔の夢を視た。
懐かしいのか悲しいのかも理解らない、唯漠然とした過去の事。
具体的に昔のどんな場面だったか誰が居たのか何があったか、些細な事は寝起きと同時に忘れて仕舞ったようだけど
薄く己の首に浮いた汗だけが、何となくだが昔の夢であったのだろうと、何処かで朦朧(ぼんやり)納得する程現実味を帯びていて。

水でも飲もう。

些か雑に首を拭って静(しず)と立つ。
昔の夢を視た所でも、別段興奮動揺なんてしてはいない。
けれどもやけに目元も頭も冴えてしまっているらしく、此の儘さっさと二度寝と決めた所でも、恐らく目蓋はそう簡単には閉じはしまい。
なればゆらりと柳の如くに水でも飲んで厠辺りへ立ち寄って
のんべんだらりと才蔵辺りと語りを合わせるのでも良い。
眠れないなら無理に寝転けなくとも善い。
そう思い、賄所(まかないどこ)へと立ち寄るも


 「おや・・・甚八?」


其処には既に、先客が居た。


 「ッ。・・・海?」
 「ええ、こんな夜更けにつまみ食いとは感心しませんね」
 「えっ、違っ お水を・・・してない、してない!」
 「ふふ、大丈夫ですよ。分かってますから。貴方は鎌や十蔵と違ってそんな事はしないでしょう」


身の丈程の水甕の前、柄杓を握って立ち尽くしているその様は
ひっくり返して見てみても、つまみ食いとは程遠い。
むしろ自分と同じくに、水を飲みに来たのだろう根津甚八は平素(いつも)の如くに非道く困っているような、泣き出しそうな表情(かお)をして
少ししょんぼり俯きながら、それでもそっと、柄杓を己に差し出した。


 「飲むの、海も?」
 「ええ、有難うございます。・・・本当なら、寝酒でも嘗(な)めたい所ですが。」
 「飲まない、の?」
 「一寸(ちょっと)今は・・・そんな気分じゃ、ないようで」


受けた柄杓で掬った水を、こくりと一口喉へと入れる。
どうやら思っていた以上に喉が乾いていたようで、其の儘続けて二口、三口。
ふうと一つ息を吐(つ)き、改めて甚八を見て振り向いた。


 「けれども貴方がこんな夜更けに、独りで居るのは奇(めずら)しいですね。」
 「ッ。その、あの」


夢、を見て。と
自分の裾を両手て固く握りしめ、非道く苦く言い難そうに澱(よど)む子供の姿を見て
この子もか、と少し含んだ笑いが漏れた。


 「怖い夢でも?」
 「こわ・・・くは、無い、けど、でも」
 「眠れなくなっちゃいましたか」
 「・・・うん」
 「ならば才蔵と一緒に散歩にでも行ってみては」
 「ッ、駄目!!!」


突如上がった悲鳴のような否定の声に、おやと思わず口を噤んだ。
声を上げた甚八は、先よりも尚恐い物でも見たかのような表情で
がたがた震えて口を噛み締め、小さく横に首を振っているではないか。


 「駄目、駄目・・・・才蔵は、才蔵、には。ごめんなさい。ごめん、なさい」
 「いえ、何も謝らなくとも・・・才蔵には、今は会いたくありませんか」
 「・・・うん」
 「そうですか・・・。では甚八。それなら少し私と話でもしませんか?・・・実は私も」


一寸夢を見ちゃいまして、と人差し指を口にあて、内緒話をするかのように笑って誘いを掛けてみれば
少し逡巡した後に、甚八も又こくりと小さく頷き返す。
ならば決まりと茶碗に二つ、水を汲み
(ついで)に別の樽の中から、漬物なんぞを二つまみ。
つまみ食いを叱る側の泥棒事に、目尻に涙を貯めたままできょとんと目を丸くしている子供に向けて今一度
内緒ですよと笑い乍、指を一本口の前で立ち上げた。



所変わって、部屋の中。
ちびりちびりと茶碗に入った水を嘗め、小さな声で他愛のない話をし合う。
眠れないならいつか昔にやったように、寝物語でもしましょうかと提案してもみたけれど
子供は茶碗を持った儘、矢っ張り僅かに首を振り、何か思いを詰めるように時折黙る。
矢張りどうも、様子が可怪しい。


 「甚八、夢を見たと言ってましたね。恐い夢で無いのなら、嫌な夢だったのですか?」
 「ッ・・・」
 「・・・験担ぎですが、悪いものなら飲み込まず、吐き出すと善いと云いますよ」
 「・・・」


直ぐに応えが返らぬ事は承知の上で尋ね訊き、其の儘少し待ってみる。
俯き茶碗を握りしめ、何かを躊躇う甚八は暫く動きはあらねども
七つか八つ、間を置いて
漸う重たい口の端(は)を、思い切るよう開いて言った。


 「・・・昔の夢」


その言(こと)に、此方も思わずはっとする。


 「昔の夢、ですか」
 「父が、居た。夢」
 「貴方の・・・父上」
 「うん」


あのね、と其処で繋いだ言葉を留め置いて、再び黙る甚八に
ほんの少し、僅かばかりにこの子が次に何を言うか、漠然乍に予想がついた。
昔の事をなぞる夢なら、其れは屹度悲しい事でも寂しい事でもあるのだろうけど
少なくともに、この子にとっては


 「・・・倖せだった」


些細(ちっ)とも幸せそうではない、泣き出しそうな表情(かお)を見て
嗚呼、やっぱりそうだろうと心の中で返答した。
そしてもう一つだけ、先程見せた甚八の才蔵に会いたくないというあの反応
あれも又、確信とまではいかないが、何処か少し腑に落ちた。
甚八は、才蔵に拾われ此処へと来たのだ。
それ以前に何があったか、どうして彼と出会ったか、何かが起きてこうなったのだろう事は予想はついていたのだが
実際に何故この子が彼に拾われたのかは当事者達しか知らないのだ。
だが、しかし。
当事者である甚八が、幸せだったという父の夢を見、そしてそれを彼に知ってほしくはないと言うのなら
多分彼女の父親は、彼等の間に起きた『何か』に関わっている。
そういう事、なのだろう。


 「倖せ、でしたか。でしたら何故、貴方はそんなに泣きそうになっているのですか」
 「・・・。おこる。怒ら、ないで」
 「怒りませんよ。更に言うなら、幸様にも才蔵にも言いません」
 「・・・」


再度、今度は非道く強く唇(くち)を噛み締め俯く子供は、まるで裁きを待つ罪人かの如しであった。
前の髪より目元は見えぬが、引き締められた口元が、時折言葉を発しようと薄く開(あ)いては閉じられて
幾度かは其の、繰り返し。
何度目か、一等小さい言の葉が、絞り出した雫のように零れて落ちた。


 「がっかり、したの」
 「・・・」
 「夢って、わかって・・・ごめんなさい」


ごめんなさい。
もう一度、嗚咽と共に同じ事を吐き出して
其の儘子供は顔を抑えて突っ伏すように泣き出した。
ごめんなさい、と今一度。謝罪の言葉を口にして。


 「でも、違うの、違う。私、嫌じゃない。好き。今が。不幸とか、嫌とか、絶対に一度も、一度も」
 「甚八」
 「ごめんなさい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいッ」
 「理解りましたから。大丈夫ですから。怒らないと言ったでしょう?ね。」


泣かないで、と。
土下座のように伏せて泣く、子供の頭へ手を置いた。
そしてそのまま緩慢(ゆっくり)と、宥めるように撫で擦る。


 「昔の事を夢に見て、倖せだったと思っただけで、どうして貴方が悪くなるんです」
 「がっかり、した。から。」
 「それは貴方の父親が今は居ないと思い出してしまったからでは?」
 「それ、は」
 「目が覚めたら、貴方は真田に仕える忍びで、この屋敷に住んでいた。その事に対して気落ちしたのですか?」
 「違う、それは違う、違う違う!」
 「ね?」


反論しようと勢いよくにあげた泣き虫顔を撫で、にこりと微笑み頭を抱いた。
だから、謝る必要なんて無い。と優しく静かに声を掛け
矢っ張り俯く子供の頭を、其の儘倒させ己の膝の上へと置いた。


 「甚八、きっと貴方だけじゃない。他の皆も此処ではない故郷があって、我等以外の大事な家族や存在が居たり在ったりしたかもしれない」
 「みんなも・・・」
 「そんな存在を思い出し、懐かしいと思った所で誰も貴方を咎めませんし、悪く言われる道理も筋合いもありゃしませんよ」
 「・・・海にも、居るの」


其の問い掛けに、一瞬だけ。
平素(いつも)笑う口の端(は)が、横一文字に結ばれる。
けれども子供に気付かせぬよう、直ぐに何時もの微笑みで
海野六郎は、こう云った。


 「ええ―――居りました。」



遠い昔の夢を見た。
懐かしいとも悲しい辛いに寂しいと、嬉しい愉しい幸せだったと、何の思いの欠片も無い儘抱(いだ)かぬ儘に目覚めた夢。
薄く寝汗を掻いただけの、それっぽっちな過去の夢。
昔の事を見た筈なのに、何とも思わぬ自分は少し
同じ夢を見た筈なのに、倖せだったと断言してきた子供の事を
羨ましい、と。頭を撫でて遣り乍に思ったのだ。


 「・・・直(じき)に夜も明けるでしょう。甚八、少しこのまま眠りなさい」
 「え、海、膝・・・寝ないの、海は」
 「元々私はもう起きているつもりでしたから、構いませんよ。」


寝ちゃいなさい、と頭を撫でる手は止めず
もう片方の指先で、涙を零して熱を持った子供の目元を拭い取り、其の儘目蓋を降ろさせる
素直に子供は目を瞑り、小さく頷き己の着物の裾を握って


 「―――あいたい」


父に、と。
殆ど聞き取れない程に、小さな夢事(ゆめごと)譫言(うわごと)を呟き乍眠りに落ちた。
其の言(こと)に、己の心の何かがもぞりと動いたような気がしたが
結局何が蠢(うごめ)いたのか何だったのか理解らない儘、海野六郎は明けゆく空を眺め見る。
そうして一言空へ向け、此方も小さく呟き言葉を囁いた。


 「おやすみなさい」



今度は―――今度も、善(よ)い夢を。



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※嘗(かつ)て自分の世界には、父親しか居なかった。そんな子供と大人の二人。

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